どこに吐き出せばいいかわからなかったので、ここを選ぶことにした。
土日に友人と遊んだ。
友人、と呼ぶのはあまりによそよそしく、親友、と呼ぶのには烏滸がましさと照れが混じるような彼女は、わたしにとってほんとうにほんとうに大切な高校の同級生で、わたしのはっぴ〜なところも嫌なところも、そのほとんどを知っているような人間だった。
初めて某事務所のライブに申し込むから、一緒に来てくれないか。
まだ当選するかわからない申込の段階から連絡をくれたのが記憶に新しい。
ファンクラブに入りたてだった彼女に「新規名義は強いらしいからね、」なんて返したら、数週間後、「ぴすちゃんの言う通りほんとに強かった!!!」と大喜びで続報をくれたことも。
シフト制の彼女自身の勤務問題とわたしの有給取れなすぎ問題をどうにかこうにか御して、ちょうどデカめの祭りと被ったことによるホテル代の高騰とえっちらおっちら戦って。
せっかくライブに行くなら1泊2日の旅行の間に某事務所オタクのハッピーセットをぜんぶやろう、なんて公式ショップとそこに行くまでの送迎バスを予約して、うちわを一緒に作って、双眼鏡とブルーベリーサプリの準備もした。
夜ごはんのお店は彼女が探して予約してくれて、「ぴすちゃんと会うのたのしみだから美容院にも行ったし新しいワンピースも買ったんだよう」って連絡してくれて、ほんとうにほんとうに可愛くて可愛くてたまらなかった。
彼女といるときはずっとごきげんでいられるからすごい。
合流してホテルに荷物を預けて、お昼ごはん、グッズ販売、公式ショップ、とひたすらに喋り倒した。
ライブ自体は翌日の昼だったけれど、前日の会場で写真を撮って回って、かわいいね、かわいいね、と言い合って。
道中でネイル道具をそろえたりなんかして、渋滞にはまったり雨が降ったりとうまくいかないことはあれど、それでもただただ幸せだった。
チェックインしたホテルの部屋が思いの外ピンクで、というかまっピンクで二人してびっくりして、それすらもたのしかった。
だから。
なのに。
彼女が予約してくれた夜ごはんの店までは、ホテルから歩いて15分ほどだった。
雨も上がってふたりでのんびりおさんぽがてらお店に向かって、のときにふと覚えた違和感。いや、最初はそんな大層なものじゃなかったかもしれない。
最初に感じたのは、「後ろが詰まっているな」程度だった。
信号待ちをして渡った横断歩道、渡った直後から後ろに人が詰まっていて、「まあ横断歩道渡ったばっかりだしそんなもんかな、」くらいに思っていた記憶がある。「もう少し歩いてこのままだったら端に避けようかな、先に通してあげようかな、」くらいで。
すぐに避ける必要性を感じなかったし、何より、彼女としゃべるのが楽しかったから。彼女とのおしゃべりを中断してまで何かをしよう、という気にはならなかった。
でもそれが判断ミスだった。
そこから5分くらい経っても、後ろの人影は思っていた以上にぴたりと着いたままだった。
彼女の真後ろに陣取った影を横目で盗み見る感じ、おそらく、男性。
歩調を速めても緩めても男はわたしたちのスピードに合わせてきていて、「あ、これは悪意なのかもしれない」って、ようやく、そのときになってようやく気がついた。彼女は当然真後ろだから見えていなくて、だからきっと男の存在すら気づいていない。
慌てて彼女の手を握って強く引いた。
「ぴすちゃんイケメン♪」ってご機嫌に彼女が言う。
車道側をふわふわ歩いていた彼女をわたしがつかまえて歩道側に引き寄せた、って、多分そう思ったはずだ。
だから、「後ろ多分狙われてる」って声を抑えたわたしにも、「えっ」って。いつも通り可憐に訊き返して、速足のわたしにちょこちょこと着いてきてくれて。「ぴったりつけられてるからわたしから離れないで」ってだけ返して、そのままずんずん進んだ。ここにきてようやく彼女も事態を察したようで、そこからは無言だった。男はそれでもわたしたちに歩幅を合わせて着いてきて、「ああ、」と思った。
進んだ先はちょうど横断歩道だったから、大きく道から逸れて男を先に行かせた。男はわたしたちを覗き込むようにしてニヤニヤしながら横を通って行った。その日彼女が着ていたワンピースは背中がすこし、といってもほんの、ほんのすこし開いたもので、多分、それを狙って、のことだった。
「あいつのこと見ないでいいからわたしの方だけ見てて」って彼女を引き寄せたくせに、当のわたしはしっかり男と目が合ってしまって、反射的に睨みつけながら「ああ、」と再度思った。
声は出なかったし、目を逸らすことすらできなかった。
怖かった。
いくら車道側を歩こうが、車道側を歩いている彼女を引き寄せようが、エスカレータで下段に立とうが。ヒールを履いている彼女に歩く速さは大丈夫かと声をかけようが、それらに対して「スパダリだね、ぴすちゃんが恋人だったらいいのに」なんて言葉をもらおうが。結局わたしが女であることは変わらなくて、性的に加害してくる男の前では足がすくんでしまうのだということを突きつけられて。
絶望した。
加害に気づいて彼女の手を繋いで引き寄せたときの「イケメンだね」ってはしゃいでくれた声もわたしに追い打ちをかけた。
わたしはあなたを守ることすらできていないのに。
あなたが悪意に晒されたことすら気がつかないで、その男と目が合ってニヤニヤされたくらいで足がすくんで泣きたくなっているのに。
どうしようもなかった。
どうしようもなく、ただの弱い人間でしかなかった。
こうやってブログにまとめてエッセイじみたスパイスを加えているのも、一種の気を紛らわせる行為にすぎないことだって自覚している。
旅行を終えて自宅に戻った日の夜、浅い眠りの中で、何度も男に追いかけられる夢を見た。
眠って、夢を見て、魘されて、飛び起きて、の繰り返しで、だれに助けを求めればいいかわからなかった。明け方にスマホを握りしめても、どこに連絡すればいいかわからない。結局、ほとんどまともに眠れないまま朝を迎えた。
今でも、怖い。
中肉中背、メガネをかけていて、赤っぽいチェックシャツを着ていた。
もうあいつが目の前にいない、どころかもうおそらく二度と会うことはないことも、結果的に後ろを着いてこられただけで(そしてその間おそらく性的な目で友人が視られ続けただけ、で)何か具体的に「これをされました!」と声高に助けを求められるようなことをされたわけではないことも、全部全部わかっているはずなのに、あの薄ら寒い顔が脳裏に焼き付いて離れない。
いや、多分対象が自分自身だったら声高に叫んでいたんだと思う。
相手が彼女だったから。
共通の知り合いに言うには彼女のプライバシーの配慮に欠けているし、言わないでひとりで耐えるには彼女はわたしにとって大切な存在すぎた。
やだな~~~
マジで性別に負けたなと思う。
昔から、女に生まれてよかった、と思えるのは、女の子を気兼ねなく遊びに誘ってぎゅっとしてられるときだけだった。
毎月メンタルもフィジカルも絶不調だし、戦わなきゃいけない仮想敵は多いし、なんだこの性別、とずっと思ってきたけど、ここにきて女の子と遊びに行くときすら「なんだこの性別」って思わされるわけだ。マジでやってられん。
そろそろたすけてくれ。つうかせめてわたしの大切な人間を守れるくらいのさ、なんかさ、あるじゃんか、。マジで頼むよ。
ライブはたのしかったし、彼女へのだいすきはますます高まるばっかりだった。
だからこそ腹立たしくてたまらない。旅行くらいハッピーにさせてもらえんもんなんか?????????????????????????????????
まとめ方ももうわからん、知らん!そのうち下げる。